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ニューズレター 第106号(2018.11.9発行)

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 日本キャリア教育学会ニューズレター 第106号(2018.11.9発行)

                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                    http://jssce.wdc-jp.com/

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■ 【開催報告】北海道・東北研究地区部会 第1回研究会  
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 2018年9月29日(土)に、北海道キャリア教育研究会の北海道キャリア教
育フォーラムとの合同開催ということで北海道東北地区研究部会が開催され
ました。会場は、札幌大谷大学大谷記念ホールです。当日は会員/非会員合
わせて50名ほどの方にお集まりいただきました。はじめに、基調講演として、
カナダ・アルバータ州カルガリー市で長く少年矯正教育に携わってきたマリ
リン・ウォードル氏から、カナダにおける矯正教育の制度的な仕組みと子ど
もの主体性を重視した教育方法について紹介され、少年院を出院し保護観察
の期間を経て社会的自立を果たしたいくつかの事例について報告がなされま
した。次に、千歳市にある紫明女子学院院長の平原政直氏から日本の少年院
の現状、続いて韓国青少年政策研究院副研究院のチョイ・ジョンウン氏によ
る韓国の矯正教育の現状について報告がありました。共通する課題は、少年
院を出院した後の自立をどう支援するかということでした。その後、弁護士
の内田信也氏、多様な課題を持つ若者を受け入れている北星学園余市高校教
頭の小野澤慶弘氏、企業経営者の山田壮範氏らを交えたディスカッションが
行われ、少年犯罪という事象のみに焦点を当てるのではなく、子ども・若者
の抱える課題を理解し、地域や社会全体で自立を支援する方策を考える必要
があるという意見に集約されました。
 今回の研究会では、これまで、キャリア教育や教育学の分野では取り上げ
られることの少なかった少年院の問題について取り上げることができたとい
う点で意義がありましたが、盛りだくさんの内容に対して、時間が少なかっ
たという反省もあります。次の研究会の運営に生かしたいと思います。
 現在、成人年齢が18歳に引き下げられることがすでに決まっていますが、
それに伴って、少年法の適用年齢および少年審判の方法についても、検討が
なされています。少年犯罪の加害者に対する厳罰化を求める世論もある中、
子ども・若者の置かれた状況に目を向けて、考える必要があります。社会正
義を実現するキャリア教育という視点から、この問題について、今後も継続
的に取り上げていきたいと思います。

                   (文責:札幌大谷大学 岡部敦)
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■ 【開催報告】日仏教育学会2018年度研究大会
                日本産業教育学会 職業指導・キャリア教育部会
                日仏学術研究公開シンポジウム          
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 2018年10月20日(土)~24日(水)にかけて、本学会の後援を得て、キャ
リア教育の日仏比較に関する3つのシンポジウムを開催し、3日間合わせて
約150名の方にご参加いただきました。各テーマは、以下の通りです。
 ・「学ぶ」「働く」「生きる」をつなぐ-キャリア教育の今とこれから-
 ・学校から仕事への移行を再考する-高等学校キャリア教育の日仏比較-
 ・若者のキャリア形成支援の課題と展望―日仏比較の視点から―
 招聘した、フランスキャリア・カウンセラー協会のシルヴィ・アミシ会長
からは、フランスのキャリア教育(orientation)の制度的変遷、キャリア・
カウンセラーの歴史、生徒の伴走支援に果たす役割などをお話しいただきま
した。特に印象深かったのは、新自由主義的ともいえるマクロン政権のもと
で、これまでになく急速に進む「改革」についてです。学校から独立した国
立の情報・進路センターとそこに所属するキャリア・カウンセラーが教員と
協働してキャリア教育を担う体制は、EU諸国の中でもユニークなものでした
が、今後、地方移管される可能性が高くなっています。キャリア・カウンセ
ラー資格の改革も行われ、初等教育において発達支援を担う学校心理士と一
体化され、「<国民教育>心理士」となりました。キャリア支援に特化して
いた役割は拡大し、いわゆるアメリカのスクールカウンセラーに類似してき
たようにも思えます。
 職業社会への移行をめぐっては、出生率がピークに達した2010年生まれの
子どもたちがこれから中等・高等教育に参入していく中で、全ての子どもの
学業継続が困難になることが予測されます。政府は中等職業教育、特に学校
外での見習い訓練(デュアルシステム)に若者を振り分けることを検討して
いるとのことでした。
 比するに日本では、小学校段階からキャリア教育が導入されていること、
職業キャリアだけでなくライフキャリアも視野に入れており、その射程が広
いこと、教員を中心としながらも地域と連携して多様な実践が展開されてい
ることなどが特徴してあげられました。一方で、今後の課題として、教員の
専門性に限界があり、チーム学校の中でキャリア・コンサルタントをもっと
有効活用していくこと、社会正義を実現するため、学校ではないオルタナテ
ィブな場におけるキャリア形成支援を充実させること、などの必要性が指摘
されました。
 今年はちょうど日仏修好通商条約調印から160周年にあたります。このよう
な節目に開かれた本シンポジウムを通して、日仏がお互いの課題・挑戦から
学び合うことで、キャリア教育をもっと発展させることができる、そのこと
を強く実感しました。本学会からは、三村隆男会員、高綱睦美会員、清水克
博会員、藤田廣志会員、本間啓二会員にご登壇いただきました。お越しいた
だいた会員の皆様と共に、この場を借りて感謝申し上げます。

                  (文責 愛知教育大学 京免 徹雄)
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■ 【コラム】エビデンスベーストなキャリア教育実践に向けて
                  職業能力開発総合大学校 新目真紀
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 日々のニュースを見ながら、現在の社会経済環境がきわめて予測困難な状
況に直面していると感じるかたは多いだろう。9月初めに経団連が就活ルー
ルの廃止を打ち出すなど、社会環境の変化の激しさに加え、人生100年時代
(長寿社会)が前提となり、誰もがスキルと知識を継続的に学習し続けるこ
とが求められるようになっている。既に働いている者にとっても将来のキャ
リアの検討は困難なものになってきた。一方これから社会に出ようという若
者にとっては、職業選びや将来のキャリアの検討は、社会人以上に困難な取
り組みであろう。学生は就職支援サイト等でVUCAの時代に適応するためのス
キルを要請されているが、そのスキルを育むべきキャリア教育はこれまでと
変わらない手法で提供されるケースも多い。将来予測の不確実性が高まって
いる現在、教育研究、教育政策、教育実践の領域においてはこれまでの常識
に基づいた経験則だけでなく、足元の現実に則した「エビデンス」を活用す
る必要があるのではないだろうか。エビデンスに基づく実践は、エビデンス
からスタートするのではなく何が問題か、何を向上させるのかという目の前
の問いからスタートしなければならないという指摘がある。キャリア教育に
携わる者として、目の前の問いとして、学習成果(ラーニング・アウトカム)
に対して焦点を当てた議論を盛り上げていく必要性を感じる。
 文科省の用語集では、ラーニング・アウトカムを「プログラムやコースな
ど、一定の学習期間終了時に、学習者が知り、理解し、行い、実演できるこ
とを期待される内容を言明したもの」と説明している。キャリア教育の学習
成果に関する研究には、キャリア探索、キャリア意思決定、キャリア管理と
いったスキルの習得を評価する方法に関する研究もある。学習成果を評価す
る場合は、何をどのような観点で評価するのか、到達度を評価するのか形成
過程を評価するのかといったことを考慮する必要もある。医療の分野に始ま
り、社会福祉や臨床心理学にも提供されてきたエビデンスベースドプラック
ティス(実証にもとづいた実践)を、キャリア教育にも積極的に取り入れて
いきたい。
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