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ニューズレター 第090号(2017.7.10発行)

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  日本キャリア教育学会ニューズレター 第90号(2017.7.10発行)

                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                     http://jssce.wdc-jp.com/
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■ 【開催報告】
    (特集)アジア地区キャリア発達学会 (ARACD)第12回研究大会①
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 2017年5月17日と18日の両日、韓国ソウル市シェラトンソウル江南パレス
ホテルにて、アジア地区キャリア発達学会(Asian Regional Association for
 Career Development)国際大会が開催されました。延べ人数で200人ほどの
参加者があつまりました。開催国である韓国をはじめ、隣国である日本、
中国(香港)、インド、インドネシア、マレーシア、パキスタン、イラン、
シンガポール、台湾、アメリカ(特別顧問)からの参加者が集まり意義深い
交流を することができました。

 大会初日の午前中は、ARACD理事会および総会を開催し、今後のARACDの進
め方について活発な議論の場となりました。ARACDは、1967年に前身となる
Asian Regional Conference on Educational and Vocational Guidance
(ARAVEG)の実行委員会が東京において開催され、1970年に台湾で開催された
研究大会で国際組織として結成されました。その後、1997年に再び台湾で研
究大会が開催され、当時の理事会で現在の名称への変更が決議され今日に至
っています。発足の段階から数えると今年が50年目、ARACDとしては20年目
となります。

 理事会では、ARACDの果たす役割についていくつか提言がなされました。
特に、Career Developmentという欧米発祥の価値観・理論に依拠した研究お
よびそれに基づく実践が主流となりつつある現状において、アジア特有の問
題について取り上げ、アジアの価値観で捉えなおしていく必要があるという
力強い発言があり、多くの理事の賛同を得ました。具体的な例としては、キ
ャリア支援に関するアジア・スタンダードの基準を作成し、ARACD主催のワ
ークショップおよび研究大会などへの参加によって、クレデンシャルを与え、
ARACDとしてキャリア・カウンセラーおよびキャリア・コンサルタントの資格
を授与することが可能となるような組織に発展させるべきであるとの提案が
なされました。すぐに実現することが難しそうな内容ではありますが、アジ
アに目を向けた研究活動・実践活動のニーズが高まっていることが明らかと
なりました。

 以上、今回のソウル大会では、今後のARACDの活動に対する大きな期待と
それを実現するための課題について改めて認識を深め、アジアの若者の社会
的・職業的自立を支援し、平和を維持するために連携・協力を深めることで
一致することができました。今後は、加盟国で開催されるキャリア教育・キ
ャリア支援関連の研究会やワークショップなどの情報を随時共有しARACDの
HP上(www.aracd.asia)で公開することになっています。日本キャリア教育学
会会員の皆様におかれましては、是非ご高覧の上、積極的に参加していただ
きたいと思います。なお、次の研究大会は、2019年度にマレーシアプトラ大
学(University Putra Malaysia)の主催で開催されることが内定(現在、細
かな運営方法について検討中)しています。多くの皆様のご参加をお願いい
たします。

 (文責:ARACD事務局長・日本キャリア教育学会国際交流委員長 岡部敦)
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■ 【開催報告】
    (特集)アジア地区キャリア発達学会 (ARACD)第12回研究大会②
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 2017年5月に韓国ソウルで開催されたアジア地区キャリア発達学会
(Asian Regional Association for Career Development: ARACD)の国際大
会に参加してきました。本大会は韓国の青少年政策研究院(National Youth
 Policy Institute: NYPI)との共催であり、非常に立派で豪華な大会でし
た。私はARACDの会計担当として、また、本学会の国際交流委員会委員とし
て、大会前日から会場(ホテル)入りしており、準備の段階から見ていまし
たが、大会委員長の金先生やNYPIスタッフの方々のホスピタリティには感銘
を受けました。

 初日の午前には理事会および総会が開催され、各国の代表者がARACDの今後
の在り方について議論をしました。初日の午後には基調講演とカントリーレ
ポートがあり、10カ国以上の代表者から報告がありました。各国の状況を学
ぶことができ、大変勉強になりました。2日目の午前には個人研究発表と特
別ラウンドテーブルがあり、各国の研究者が各自の研究について発表しまし
た。私も口頭発表を行いましたが、異なる国や文化の視点から有益なコメン
トやアドバイスをいただくことができました。2日目の午後には韓国の学校
視察ツアーがあり、現場の先生から話を聞くことができました。

 今回得たものは多数ありますが、ここでは2つだけ紹介します。1つは
「契機」で、同じアジア地域でありながら文化や考え方が異なる諸外国の研
究者との交流を通して、自身の研究の価値や意義をグローバルな視点(特に
アジアの視点)から捉え直す良い機会を得ることができました。もう1つは
「動機」で、諸外国の研究者から「英語で書かれた論文はないのか」と抜刷
を求められたことなどを通して、自信にもなりましたし、将来的に自身の研
究を国際的に展開してみたいなという想いを強くしました。北米や欧州の国
際学会には過去に何度か参加したことがありますが、実はアジアは今回が初
めてでした。今後はもっとアジアの国際学会にも積極的に足を運んでみよう
と思います。
                    (文責:大阪大学 家島明彦)

※ARACD韓国大会フォトギャラリー
https://goo.gl/photos/DCoVv5ZmDZyaUdri9
学会員のみ閲覧可といたしますので、ファイル写真の二次利用やURLの転載は
ご遠慮ください。
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■ 【書評】
  『経験資本と学習――首都圏大学生949人の大規模調査結果』
  (岩崎久美子・下村英雄・柳澤文敬・伊藤素江・村田維沙・堀一輝著
                          明石書店 2016)

                        早稲田大学 三村隆男
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 2017年3月大田区より『大田区子どもの生活実態に関するアンケート調査
報告書』が示された、学校のおける貧国が取りざたされる中、同区が三つの
要素で生活困難層を特定したものである。その一つに「子どもとの経験や消
費行動、所有物に関する項目」があり、その中には、「海水浴に行く」「博
物館・科学館・美術館に行く」「キャンプやバーベキューに行く」などの項
目があった。

 書評にもかかわらず、大田区の調査報告書を最初に挙げた理由は、同書の
「経験資本の格差はそのままキャリア形成上の格差へとスライドする」
(224頁)や、さらに「学習経験がある種の抽象的な方略として整理されて、
現実の学力レベルと相関する。個々の経験が資本として蓄積されて、その後
の生活と関連する一つの実相を観察できる」(223頁)を支持する事例とし
たかったのである。
 同書は、前半の首都圏の大学生に対する大規模調査から人生における経験
がキャリア形成にどの様に関連づくかに触れ、キャリア研究における「経験
資本」という概念を示した。ここでの引用は、すべて著者のひとり下村英雄
氏執筆の終章からである。

 氏のさらなる主張「キャリア教育が、時に現実離れした夢や希望に駆り立
てるかのような口ぶりであるのは、どこかで若者や子どもの人生をリセット
するような視点を確保するためである。仮によそのような形で現実から離れ
るのでなければ、生まれてからこの方、好むと好まざるとにかかわらず蓄積
されてきてしまった経験資本の格差におしつぶされ、どこまでも苦渋を噛み
締めつつ生きなければならないであろう」(234頁)はキャリア教育実践が
抱える葛藤を見事に言い当てている。

 職場体験、就労体験をはじめとする学校におけるキャリア教育の取り組み
は学校が担うべき子どもたちの経験資本の平準化に大きく貢献するものであ
る。こうした体験活動について、従来の啓発的経験からさらに踏み込んで
「経験資本の格差」の視点からその意義を検討する時代が到来したと言える。
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■ 【コラム】酪農家民泊体験から捉える教育大生のキャリア意識の変容

                     北海道教育大学 半澤礼之
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 北海道教育大学は5つのキャンパス(札幌・函館・旭川・岩見沢・釧路)を
有しており、私は道東に位置する釧路のキャンパスに所属しています。本キ
ャンパスでは、第一次産業が盛んであるという道東の特性を生かし、体験を
通じた食育指導力の向上や地域とのつながりの重要性の理解を促すことを目
的として、地元の農協の青年部の方々の協力のもと、酪農家宅での宿泊作業
体験授業(民泊体験実習)を行っています。私は民泊体験実習に関わるよう
になって4年目(実習自体は5年目)になるのですが、この実習は受講生に
とって「将来学校教員になる自分」という彼らのキャリア意識を深める上で
重要な機会になっていると考えています。

 本実習は「宿泊体験」+「振り返りのための個人・グループワーク」の二
部構成になっており、私は主に後者に関わっています。ワークでは、先述し
た本実習の目的に沿う意見が学生から多く出されるのですが、もう一点重要
な意見のカテゴリとして、「将来教師になる自分を見つめなおす」というも
のがあげられます。ある地域に留まり、そこで何代にもわたって酪農を続け
ている方々とのやり取りは、地域間を移動し(本学の学生のほとんどは釧路
出身ではない)教師という職業を自ら選択した(と自分は考えている)彼ら
にとって、自身のこれまでやこれからを捉えなおす機会になっているようで
す。

 実際、実習前後に受講生に行った調査では、「見つめなおし」に関するデ
ータは十分ではないものの、この体験が彼らの大学生活での学び、そして自
らのキャリアに関わる将来展望に影響を与えている可能性があることが示唆
されました(半澤・宮前,2015)。

 ここまでの内容ですと、「大学生が企業にインターンシップに行って新し
い視点を得る」といった従来のキャリア教育と大きく違いがないように見え
ると思われます。私は今後、この活動を「地域と教育」というキーワードで
従来とは異なった視点から深めていきたいと考えています。

【引用文献】
半澤礼之・宮前耕史(2015).「酪農家民泊体験実習」プログラムを通じた
大学生の知識構造の変化と将来展望形成 日本教師教育学会第25回研究大会
発表要旨集,186-187.
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