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ニューズレター 第95号(2017.12.8発行)

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  日本キャリア教育学会ニューズレター 第95号(2017.12.08発行)

                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                     http://jssce.wdc-jp.com/
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■ 【開催報告】北海道・東北研究地区部会 研究大会
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 2017年10月29日(日)に、北海道・東北研究地区部会が開催されました。
会場は弘前大学教育学部302教室です。当日は会員/非会員あわせて12名の方
にお集まりいただきました。講師は、北海道・東北地区理事の岡部敦先生
(札幌大谷大学)で、講演内容は、「社会的包摂を目指すキャリア教育の可
能性について ~カナダ・アルバータ州の高校教育制作を中心に~」と題し、
この7月までのカナダでの滞在経験についてのお話です。
 最初に取り上げられたのは「日本の高校教育が生徒にとってレリバンスが
あるかどうか」という問題でした。日本の高校中退の問題は統計上の見た目
以上に深刻であり、背景に職業教育の位置づけがきちんと行われていない問
題があるとの指摘です。
 アルバータ州でも高校中退の主な理由は「必要な支援を得られない」「学
校にいることの意味がわからない」などが挙げられており、日本と共通して
いるように感じられました。これに対し、アルバータ州では「生徒を高校に
合わせるのではなく、高校を生徒に合わせる」のスローガンのもとに、学校
外から様々な人や資金を高校キャリア教育に参入させるなど様々な対策がと
られている様子が紹介されました。中でも目をひいたのが「1単位修得に要
する履修時間の規定をなくす」といった制度改革で、形式ではなく実質を重
視する姿勢の表れと感じられました。
 当日は、活発な質疑応答が行われました。日本でこのまま導入することは
法的問題など難しい面もありますが、今、日本で行われているやり方が唯一
の選択肢ではないということに目を向けさせるという意味でこのテーマを地
区部会で取り上げた意義は十分にあったといえます。

               (文責:弘前大学教育学部教授 吉中淳)
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■ 【コラム】実りの秋に思う
           弘前大学教育学部附属教員養成学研究開発センター
                              吉崎聡子
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 「ぼたぼた ぼたぼた/りんごの落ちる音は/お母さんのなみだが 落ち
る音だ(澤田,1992)」これは、後に「りんご台風」と呼ばれた1991年の台風
19号の被害の様子を、子どもの目から綴った文集に掲載された詩の一部です。
今年9月に日本列島を縦断した台風18号は、その進路予測が「りんご台風」
に似ていたため、「りんご台風」の再来かと青森県津軽地方の農家は非常に
恐れました。台風18号について報じる新聞にて「りんご台風再来か」と見た
とき、ふと冒頭の詩を思い出しました。
 青森県の資料によると、「りんご台風」によるりんごの落果数量は34万5
千トン、その年のりんごの9割が何らかの被害を受け、りんご関連の被害総
額は7,400万円超とのことでした。この年の冬は、りんご収穫による収入が
無いため、現金収入を求め出稼ぎへ行く農家が特に多く、子どもを両親に預
け、夫婦二人共に出稼ぎへ行く農家もあったとのことです。前述の文集には、
小中学生の出稼ぎに行く親を思い、さみしく辛い気持ちが描かれたものもあ
りました。
 近年は毎年のように自然災害が起こり、各地で甚大な被害をもたらしてい
ます。農業や畜産業は自然災害によって農地に被害が及ぶと、元の状態を取
り戻すまでに年単位の時間を要します。労働内容の厳しさに加え、収益面で
の不安定さ。農業の後継者不足は深刻ですが、この状態の農業を子どもに継
いでくれと言える親がどれだけいるのでしょう。この現状打破の一方略とし
て、農水省は農業所得の向上に繋げるための新たな農業経営指標としてPDCA
サイクルを提案しています。PDCAサイクルを回すために必要な知識や理解力
の素地は学校教育において身につくものでしょう。学校教育は将来何の役に
立つのか、という批判は常にあります。しかし農業に限らず、将来いかなる
場面でも今日の学びは役立つ、だから学ぶのだということを感じられるよう
な学校教育が行われることを願います。

引用文献 澤田龍太(1992) りんごとなみだの落ちる音 弘前大学台風19号
作文編集委員会(編) リンゴの涙―平成三年の台風19号の児童の記録 弘前
大学台風19号作文編集委員会 pp.96-97.
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