情報委員会

委員長:
下村英雄(労働政策研究・研修機構)
副委員長:
高綱睦美(愛知教育大学)
委員:
海藤美鈴(江東区立浅間竪川小学校) 京免徹雄(愛知教育大学) 吉中淳(弘前大学)
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  日本キャリア教育学会ニューズレター 第94号(2017.11.10発行)

                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                     http://jssce.wdc-jp.com/
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■ 【開催報告】日本キャリア教育学会第39回研究大会(1)
            
            日本キャリア教育学会第39回研究大会実行委員会
            委員長 上越教育大学学校教育研究科 山田智之
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 2017年10月13日(金)プレ企画・14(土)・15日(日)に日本キャリア教育学会
第39回研究大会が上越教育大学において開催され、約200名の方々にご参加
いただきました。当日は十分行き届かなかった点が多々あり不便をおかけし
ましたが、皆様のおかげで盛会のうちに終了いたしましたことに深く感謝申
し上げます。
 さて、今大会は新しい小中学校の学習指導要領に「キャリア教育」という
言葉が加わり、その重要性に対する認識も高まりつつある中、大会のテーマ
を「つなぎ・そだて・うごかすキャリア教育『点・線・面から未来へ』」と
設定し、「農場からシンカする」をテーマとした株式会社穂海代表取締役 
丸田洋様による基調講演、「新しい学習指導要領とキャリア教育~戦後教育
の歩みをみつめて~」をテーマとした、仙崎武様(日本キャリア教育学会
名誉会長)、長田徹様(国立教育政策研究所総括研究官)、林晃彦様(上越
市立城北中学校校長)をシンポジスト、三村隆男様(早稲田大学院教職研究
科教授)をコーディネーターとする実行委員会企画シンポジウム、「キャリ
ア教育研究ライブ:論文投稿への力強い一歩」をテーマとした研究推進委員
会企画シンポジウムをはじめ、5件の会員企画シンポジウム、50件の口頭発
表、29件のポスター発表が行われ「キャリア教育における点・線・面をどの
ように、つなぎ、そだて、うごかすのか」について活発な論議が行われまし
た。戦後72年が過ぎ、科学技術の発展とともに多様なキャリアが生まれ、歴
史と教訓の中から、未来への知恵を探らなければならない時代の中にあって、
今大会がこれからのキャリア教育を探求する契機となれば幸いです。
 最後になりましたが、ご共催いただきましたARACD(Asian Regional
 Association for Career Development)様、日本教育大学協会様、上越キャ
リア教育研究会様、全国中学校進路指導キャリア教育研究協議会様、東京都
中学校進路指導研究会様、東京都小学校キャリア教育研究会様、ご後援いた
だきました新潟県教育委員会様、上越市教育委員会様、妙高市教育委員会様、
糸魚川市教育委員会様、また、ご協賛くださいました企業・団体に対し心よ
り感謝の意を表させていただきますとともに、平成30年度に開催される第40
回研究大会(早稲田大学)の成功を祈念し、お礼の言葉とさせていただきま
す。
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■ 【開催報告】日本キャリア教育学会第39回研究大会(2)

                 日本キャリア教育学会第39回研究大会実行委員会 委員
           上越教育大学学校教育研究科 修士2年 箱田優也
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 第39回研究大会が盛会のうちに終わりましたこと、ご参加いただきました
皆様に深く御礼申し上げます。本大会が、今後の皆様の研究や実践にお役立
ていただければ幸甚に存じます。
 さて、本大会の運営に際しまして、私を含め大学院生を中心に20名程度の
学生がお手伝いさせていただきました。大会準備や、大会HPの運用、当日の
進行など様々な形で携わらせて頂き、多々不手際があったかと存じますが、
私どもにとってはご参加いただきました皆様との関わりが、社会人基礎力育
成の場であり、まさに自分自身のキャリア教育の場であったと感謝しており
ます。また、キャリア教育に携わる多くの方々の存在を肌で感じるとともに、
非常に多岐に渡る研究や、研究を支援するシンポジウムなどを拝聴する中で、
大学内に留まった自身の学びに対して、視野の狭さを自戒する契機となりま
した。
 特に、仙崎 武 先生のご発表では、内容も然ることながら、長年に渡って
キャリア教育を推進し老成円熟されたお姿を拝見し、これから教師や社会人
としてのキャリアをスタートする学生にとっては大変感銘を受けました。上
越教育大学の学生は、多くが教師としてのキャリアを志望しております。子
ども達のキャリア教育を推進するためには、まず教師自らが何歳になっても
常に成長し続けるキャリアを歩むことが重要だということを、体現して頂い
たように感じております。
 末筆ながら、大会運営に際して多々不手際があったかと存じますが、寛大
なご対応を下さいました参加者の皆様に感謝申し上げ、ご挨拶とさせて頂き
ます。
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■ 【開催報告】日本キャリア教育学会第39回研究大会(3)
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 日本キャリア教育学会第39回研究大会に教職大学院の院生として参加させ
ていただきました。
 初日に行われた基調講演では、学生から社会人に移行した段階で社会人基
礎力が欠如しているケースが多い現状を知り、この現状を踏まえて来年度以
降教員として指導に携わることに大きな使命を感じました。また考える経験
の不足、中でもリスクマネジメントの根本的な考え方は大変印象的でした。
実行委員会企画シンポジウムではキャリア教育の歴史から改訂が迫った学習
指導要領まで、幅広く最新情報を絡めた深い議論をお聞きしました。特に、
日本キャリア教育学会名誉会長の仙崎武先生の貴重なご経験とお考えをお聞
きできたことに非常に感激しました。「偶然をどう偶然でないととらえ、チ
ャンスに変えるか」というお言葉は、人生の様々な出来事を轍と表したキャ
リアの考え方につながるのではと思いました。教育研究懇談会では、上越教
育大学の先生方やスタッフの方々のホスピタリティに感銘を受けると同時に、
研究の第一線で活躍しておられる先生方にご挨拶させていただけ、大変貴重
な時間でした。
 2日目は、同時進行で進められた各種発表に参加し、現在研究課題として
進めている内容とリンクするご発表から周辺知識の理解を広げられたととも
に、興味深い新たな研究領域を知り大きな刺激を受けました。
 非常に濃密なプログラムに、今後の学びに対する期待で胸がいっぱいにな
りました。今後大切にしたいと思ったキーワードは「チャレンジ」です。講
演やシンポジウムで知見を広げると同時に、口頭発表やポスター発表で多様
な研究内容に触れ、私自身も研究に貪欲になり失敗を恐れずチャレンジする
姿勢でい続けたいと思いました。来年度から中等教育の教員へと立場は変わ
るものの、このような学びの機会に積極的に参加し、自らの課題意識を深め
追及していきたいと思いました。貴重な機会に参加させていただいたことに
大変感謝しております。
       (文責 早稲田大学大学院教職研究科 修士2年 権田夏美)
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■ 【資料紹介】国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター
        キャリア教育リーフレット1
         「高校生の頃にしてほしかったキャリア教育って何?」
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 国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターでは、キャリア教育
リーフレット1「高校生の頃にしてほしかったキャリア教育って何?」を
発行しています。
 高校生の頃を振り返って「もっと指導してほしかった」と思う学習内容に、
「自分の個性や適性を考える学習」「進学にかかる費用や奨学金についての
情報」「社会全体のグローバル化(国際化)の動向についての学習」などが
挙がっています。
 その他、時間がたってから「役立つ」と感じられる学習内容、高校生のと
きに「取り組んでおきたかった」学習内容など、キャリア教育の実践に役立
つ情報が豊富に掲載されています。
 本学会会員の立石慎治先生、京免徹雄先生も作成に参加しています。

リーフレットは下から
 http://www.nier.go.jp/shido//centerhp/syoukyari/Carrier_series2017_A4_0331.pdf

その他の進路指導・キャリア教育関係の資料も数多くあります。
 http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/3.htm#sinro
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■ 【書評】
 『<OECDスキル・アウトルック2015年版>若者のキャリア形成
  -スキルの獲得から就業力の向上、アントレプレナーシップの育成へ-』
 (経済協力開発機構(OECD)編著、菅原良・福田哲哉・松下慶太 監訳、
  竹内一真・佐々木真理・橋本諭・神崎秀嗣・奥原俊訳 明石書店 2017)
                 労働政策研究・研修機構 深町珠由
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 若者が学校を出て職業に就き、社会で活躍することに際し、先進各国は若
者の高失業率や不安定就労の増加など、それぞれに課題や悩みを抱えている。
本書は、16~65歳までの成人を対象にOECDが実施したPIAAC(国際成人力調査)
の分析結果を中心として、若者のキャリア形成上の課題や対処策に焦点をあ
てて執筆された、OECD報告書の翻訳である。
 本書の構成は、若者の発達上の流れに沿って、大きく三つの部分に分かれ
る。まず第1章では、OECD諸国に共通する若者就労に関する現状と課題が総
合的に提起される。第2章以降は、学校段階の若者に関する課題と対処策
(第2、3章)、学校から労働市場への移行に関する課題と対処策(第4、
5章)、就職後の若者に関する課題と対処策(第6、7章)、という流れで
論じられている。
 先のPIAAC調査で、日本の若者は、PISA(OECDによる生徒の学習到達度調
査)と同様に、特に読解力・数的思考力といった認知的能力において極めて
高い成績を修めている。また日本社会は、新規学卒一括採用という独特の慣
行により、スキルのない新卒者でも失業しないで済む仕組みが依然として機
能している。こうした特徴を踏まえると、若者の能力不足や失業率の高さを
大きな社会問題として抱える国々の悩みは、日本にいる我々にとっては「よ
その国の話」に聞こえ、あまり危機意識を感じないかもしれない。しかし本
書では、ニートや学校中退者、低スキルのまま卒業する若者への継続した支
援の重要性や、学業から就労へとスムーズに移行するために、硬直化した教
育制度を変革し、時代とともにアップデートされる知識・技能の修得を含む
職業教育を柔軟に取り入れることの重要性を繰り返し説いている。それは若
者の現状如何に関わらず、どの国にとっても重要な視点であることは間違い
ないだろう。
 さて本書の最後では、就職できない若者のスキルを陳腐化させないための
秘策として、敢えて「就職」にこだわらず、若者の「起業」支援へと活路を
見出しており、その制度的な障壁をなくすための努力を各国に促している。
正直なところ、就職できないタイプの若者が一足飛びに起業するという結論
には、唐突感が否めない。ただ、起業とまではいかないまでも、職業の世界
で自律的に活動する意欲を持たせるようなキャリア教育を目指すことは、日
本社会でも今後十分生かせる素地があるのではないか。
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■ 【コラム】HR業界と大学院を両立する中で思うキャリア
                  株式会社クラス人材紹介事業部、
            大阪教育大学大学院職業科学研究科 原田大地
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 私は新卒で人材業界の企業に就職すると同時に、夜間の社会人大学院に通
っています。仕事では人材紹介事業に携わり、求職者へのキャリアカウンセ
リングなどを実施し、仕事で出た課題などを大学院での研究で解決したいと
思い、今の道に進んでいます。10人10色のキャリアをサポートしていくには
キャリアに関する研究を活用していくことは非常に大切であると、日々感じ
ています。
 その中で私自身課題であると感じていることを少し書かせていただきます。
 年間転職者が300万人を超え、「転職社会」へ向かっている日本。人材不足
が顕在化しはじめ、益々個人のキャリアに向き合うことを人材業界では求め
られています。
 人材業界では一番の課題に「人材不足」が挙がっています。新卒、中途採
用いずれも売り手市場となっている今、働く人々の意識も変わってきている
と感じています。各企業の人事の方とお話しをしていると「今は昔より容易
に転職できる。この環境で辛抱してキャリアを築こうという意識が低下して
いるように思う。面接をしていても前職の不満から転職する人が増えている」
とよく聞きます。
 もちろん、転職を繰り返すことが一概に悪いとは考えませんが、AIなどが
本格的に雇用に影響を与え始める時、現状のままでは雇用環境は壊れてしま
うと感じます。この先、オックスフォード大学のオズボーン教授が予測する
ようにAIの導入が進めば、技術的失業が多く出る可能性が高い。10年後すら
見えない現代だからこそ、汎用的能力、専門的能力を自らが決めた道で高め
ることが失業を防ぐと言われている。
 登っている山から途中下山がより容易になっている現代だからこそ、自分
の生活を含めたキャリアを再考し、最も最適と考えられる道を自分自身で選
択が必要とされていると思われます。先行き不透明な社会だからこそ、自律
的なキャリア形成が必要であり、専門性を身につけていくことが重要ではな
いだろうか。そのため、早期からのキャリア教育が益々、求められると考え
ており、期待されていると考えております。
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  日本キャリア教育学会ニューズレター 第39号(2017.10.10発行)

                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                     http://jssce.wdc-jp.com/
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■ 【書評】『課題解決型授業への挑戦
        -プロジェクト・ベースト・ラーニングの実践と評価-』
      (後藤文彦監修 伊吹勇亮・木原麻子編著
                       ナカニシヤ出版 2017)
         名古屋大学大学院 教育発達科学研究科 菊池美由紀
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 本書は京都産業大学におけるプロジェクト・ベースト・ラーニング(以下PBL)
の実践内容、実践方法、評価について述べた本である。同大学は経済産業省
が選定する「社会人基礎力育成グランプリ」への参加実績に加えて、「社会
人基礎力を育成する授業30選」(2014)に全国で唯一2つの授業が選定され
ているなど、PBLの実践において高い評価を得ている。

 本書の第一部ではPBLの概念と、同大学におけるPBLの位置づけを論じてい
る。キャリア教育を行う際、大学の特性を踏まえた授業設計は重要であるが、
PBLにおいて「この大学だからこそ取り組むべき課題」にこだわっていること
が分かる。

 続く第二部ではPBL運営の実際を論じている。3年一貫のプログラムや教育
目標と評価、教育方法といった教育に関することだけではなく、授業で取り
組む課題を提供いただく企業との連携、学生の募集(時期や内容)、受講者
選考基準、学生がPBLを行う際に直面する困難の事例や教員の支援例など、
PBLを実践する際に考えなければならないことが書かれており、実際に授業
を行う際のイメージが湧きやすい。また多様な背景を持つ教員(学部所属の
専任教員、全学共通教育センターの専任教員、非常勤教員)がPBLを担う上で、
それぞれに期待されている役割も明示されている。

 第三部では教育成果について論じている。キャリア教育ではその効果をど
のように測るのかが課題となっており、授業前後でキャリア成熟度を比較す
ることが多いが、同大学では卒業生追跡調査により、「仕事満足度」を確か
めることでも効果を測っている。「仕事満足度」という観点は、キャリア教
育を考える上で非常に興味深い。

 具体的な実践方法に加え、教育効果を実証的に研究した本書は大学のキャ
リア教育を考える上で大きな指針となる。欲を言えば、グループワークにつ
きものの「フリーライダー」対策をどのようにしているのかについても知り
たいと思った。
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※キャリア教育関連の著作を発刊・発表した会員は、学会事務局までご献本
ください。学会HP上に本のタイトルおよび著者名を掲載した上で、ニュー
ズレター書評欄で取り上げます。

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■ 【コラム】LGBTIとキャリア教育
          ー自分らしく生きることのできる社会を目指してー
           学校法人自由学園男子部(中等科・高等科)教諭
                            高野慎太郎
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 子どもたちと関わるなかで、自身の無力さをしばしば痛感します。社会に
ある偏見や差別で苦しむ子どもたちがおり、そうした不条理な社会の形成に
加担してしまっている一人の大人として無力さを感じ、子どもたちに申し訳
なさを感じるのです。キャリア教育は「生き方にかかわる教育」であると言
われます。どの子にも自分らしく生きてほしいと願うほどに、社会の不条理
が自覚されます。性別や国籍や人種等によって、偏見を持たれたり差別を受
けたりする不条理です。不条理な社会にあって、どのような教育を行うこと
ができるか、この悩みが解消することはありません。しかし、社会の現状を
肯定するのでなく、社会に働きかけることもまたキャリア教育の領分である
ということに思い至ったとき、私は救いを得たような気がしました。

 いま私は、LGBTIの子どもが自分らしく生きるためのキャリア教育に取り
組んでいます。もちろん、悩みを抱える子どもに寄り添い、困難を共有する
こともしています。加えて、悩みを抱える子どもと支援者の有志生徒を主体
として「LGBTIの生き方研究会」の活動をしています。LGBTIの人々がより自
分らしく生きられる社会の実現が会の目的です。そのために、子どもたちは
休日も返上で勉強会や当事者懇談会などに出て行って情報を摂取し、どこか
らともなく海外の研究者や実践者との繋がりを持ち帰り、海外の文献を翻訳
して学友に共有し、ある生徒は本場のLGBTI支援を学びたいと海外に飛び立
ち、様々な実践者や研究者を学校に招き、啓発のためのワークやアクティビ
ティを考案し、学校や地域のイベントでそれらを発表をしたりと、様々な形
で社会に関わっています。共に活動に取り組むこと自体が当事者の生徒を勇
気づける側面もあるようです。

 LGBTIを掲げて社会に関わることで歓待を受ける場面もあれば、批判の目
に晒されることもあります。しかし、子どもたちが高く理想を掲げ、臆せず
社会と関わりを持ち続けることが、社会をより良くすることであると思いま
す。これからも、誰もが自分らしく生きていくことのできるキャリア教育を
探求してまいります。
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  日本キャリア教育学会ニューズレター 第92号(2017.9.8発行)

                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                     http://jssce.wdc-jp.com/
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■ 【開催報告】近畿/中国・四国研究地区部会 合同研究大会
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 2017年7月8日(土)に、近畿/中国・四国研究地区部会の合同研究大会が
開催されました(会場:大阪大学豊中キャンパス ステューデント・コモン
ズ セミナー室B)。当日は、会員/非会員あわせて35名の方にお集まり頂
きました。
 第1部の基調講演では、寺田盛紀先生(岡山理科大学)より「高校生・大
学生のキャリア形成に関する国際比較研究が教えたこと」と題したご講演を
頂きました。「2009年~2012年の6か国における高校生の職業観比較縦断調
査」および「2013年~2016年の4か国における大学生の職業的資質形成の比
較縦断研究」の一連の研究を通して得られた、1)研究遂行上の配慮と課題、
2)研究結果に関する考察と今後の課題について、興味深いエピソードを交え
たお話を伺うことができました。特に、教育システムの異なる国々の比較を
行うにあたり研究対象をどのように選定したのか、また、研究倫理に関する
様々な問題をどのようにクリアしていったのか等、今後の研究活動を行う上
で参考となる、数多くの示唆を得ることができました。
 第2部のパネルディスカッションでは、「世界のキャリア教育・キャリア
形成支援」と題して、家島明彦先生(大阪大学)、伊藤一雄先生(千代田短
期大学)、古川雅文先生(兵庫教育大学)、寺田盛紀先生(岡山理科大学)
にご登壇頂き、全体討議が行われました。教育システムを背景にした各国に
おける職業観の形成プロセスの違いや、我が国におけるキャリア教育の定義、
とりわけ中教審答申における職業観の位置づけの変化等、様々な視点から議
論が展開されました。実践的には、各国の教育システムの良い点を参考にし
つつ、日本に合った形で教育システムを再考していく必要があること、そし
て、学術的には、職業観に関連するコーリング(calling)や働くことの価
値観等に関する研究を深めていくことが、今後の課題として提起されました。

                 (文責:関西外国語大学 古田克利)
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■ 【開催報告】関東研究地区部会第1回研究大会
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 2017年7月31日(月)9時から17時、関東研究地区部会研究大会・総会が
早稲田大学国際会議場3階第1会議室を会場に東京都小学校キャリア教育研
究会夏季研修会を兼ねて開催されました。
 午前の部では、東京都教職員研修センター企画課指導主事 大城裕司氏よ
り、「東京都のキャリア教育」という演題で次期学習指導要領に向けたお話
をして頂きました。引き続き、全国中学校進路指導・キャリア教育連絡協議
会会長東京都荒川区立第7中学校校長 近江貞之氏より、「中学校進路指導
・キャリア教育の現状」と題して、荒川区立第7中学校の取組を中心にお話
して頂きました。午前中最後の講演は東京都世田谷区立尾山台小学校校長
 渡部理枝氏より、「自分も他者も大切にし、自信をもって挑戦する子ども
の育成~全教科等におけるキャリア教育の実践を通して~」という演題で、
平成27・28年度世田谷区教育委員会「世田谷9年教育」研究開発校(キャリア
教育)の成果について報告して頂きました。
 午後の部では、京都市小学校生き方探究・キャリア教育研究会会長 京都
市立静原小学校校長 林久徳氏より「京都市のキャリア教育と京都市小学校
生き方探究・キャリア教育研究会」と題して、全国キャリア教育研究京都大
会の歩みと静原小学校での取組を中心にお話を頂きました。その後、前関東
地区部会長東京都板橋区立中台小学校校長海藤美鈴氏の司会のもと、参加者
全員から一言ずつ発言を頂きました。続いて、国立教育政策研究所生徒指導
・進路指導センター研究員立石慎治氏より「今後の教育動向とキャリア教育」
という演題でキャリア教育のねらいや背景などをお話して頂きました。そし
て、日本体育大学教授本間啓二氏より、「教員の指導力とキャリア教育」と
題して、新学習指導要領のキャリア教育のポイントについてお話を頂きまし
た。最後に、日本キャリア教育学会会長 早稲田大学教授三村隆男氏に、本
日の会全体をまとめ、締めのご挨拶を頂きました。

        (文責:日本キャリア教育学会関東研究地区部会 代表
                    日本進路指導協会 千葉吉裕)
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■ 【書評】
  『自己発見と大学生活: 初年次教養教育のためのワークブック』
  (松尾智晶監修 松尾智晶・中沢正江著 ナカニシヤ出版  2017)
                      愛知教育大学 京免徹雄
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 本書は、大学の初年次学生を対象としたキャリア教育のためのテキストで
ある。初年次教育科目といえば、アカデミックスキル修得を中心とするもの
が多いが、本書はこれらのスキル(プレゼンテーション、ディスカッション、
調査方法等)を育てる要素を入れながら、「自分の方針」を表現し合い、問
いかけ、そのことを楽しみ喜び合う機会を提供するように構成されている。
その背景には、「大学の初年次学生にこそ、自分は何者なのか、自分はどの
ように学び、どのように生きたいと思うのかという「方針」を自らに問いか
け続けてほしい」という著者の強い願いがある。具体的な構成は、以下の通
りである。

Part I  自分自身を省察し発見する:様々な活動と情報を基に
01 オリエンテーション:自己表現とフィードバックでお互いを知り合う
02 対話を通して知る自分:自分が人生で大切にしてきたことを省察する
03 大学生活を調査する(1):先輩に聞く大学での学び方
04 大学生活を調査する(2):先輩に聞く大学生活の過ごし方
05 自分の「今」を表現する:文章と図で今の自分を表してみよう
06 社会人生活を調査する:
   社会人の先輩に聞く―大学と社会をむすぶ私の大学生活
07 私が大学生活でむすびたいもの:
   社会人へのキャリアインタビュー・レポートと自分の大学生活の発表」

Part II  チームを創り,表現する:私たちが考える「大学生活の愉しみ方」
08 グループワークとポスターセッション
09 発表準備と発表の振り返り
10 「 私の大学生活」発表:スピーチ体験とフィードバック
11 今期授業の振り返り:今後の大学生活に向けて

 Part Iでは、自己理解と他者理解を繰り返すことで、大学生活のビジョン
を構築していく。Part IIでは、グループで活動し、調査・発表することで、
Part Iでつくりあげたビジョンをさらに深化させる。さらに本書には2種
類の別冊、Work BookとReflection Noteも付いており、この分野の専門家で
なくとも授業を展開できるように配慮されている。なお、著者自身も指摘し
ているように、各大学・学部の特性をふまえて適宜アレンジを加えることで、
さらなる有効活用が期待できるであろう。
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■ 【コラム】「高卒就職」いよいよスタ-ト!
              ~リジリエンスの育成を考える~ 
                     名古屋大学大学院 胡田裕教
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 来春高校卒業者の就職選考がいよいよ始まろうとしている。文部科学省、
厚生労働省の通知により今年も選考開始時期は9月16日以降となっている。
 今は、応募書類を作成し事業所への郵送も済ませ、まさに選考を迎えよう
としている時期である。就職希望の生徒を抱える高等学校の現場では、少し
張り詰めた緊張感のある状態ではないだろうか。
 私自身、かつて高等学校で学校全体の進路指導を見渡す立場を経験し、所
属する都道府県の「私立高等学校進路指導研究会」の就職担当も務めさせて
いただいた関係上、この時期になると就職における高校の現場の様子が頭に
浮かんでくる。
 「高卒就職」の応募・推薦方法としては、ほとんどの都道府県で、「一定
期日後複数可」となっている。つまり、一定時期(9月中、10月中など)ま
では1人1社制となっており、その時期を経過して初めて2社もしくは複数
社応募することが可能になる。この部分が「大卒就職」と大きく異なる点の
一つである。
 昨年度の10月末時点での就職内定率は全国平均で74.9%(文部科学省調べ)
であった。これは、逆に考えると、就職希望者の4人に1人がこの時点で内
定が決まっていないことも統計上同時に示している。就職指導担当者にとっ
て、内定の決まっていない生徒たちを適切に指導、支援していくことがこの
時期重要な役割となる。1度または、2度以上の不合格通知を目にした生徒
は、完全に自信を失ってしまう場合がある。それぞれに家庭の事情があり、
保護者からの期待も背負っているのは理解しつつも、再度、応募することに
恐れ戸惑ってしまう場合も見受けられる。その生徒に、チャレンジしていく
気持ちを持たせるには、時間も必要であるし、教員側のかかわりにも根気が
必要となる。そこで、思いつく言葉が「リジリエンス」である。「回復力」
という訳語がよく充てられている。「へこたれない力」というニュアンスを
持つ言葉である。
 これは、生徒側にも、また、もしかすると指導する教員側にも重要になる
力ではないだろうか。知識基盤社会と言われる現代において日頃から、その
ような力の育成を意識した教育実践の重要性も挙げられる。そういった生徒
たちが笑顔で卒業していくためにも就職指導担当者の果たす役割が大きいこ
とを改めて感じさせられる。経験者として、就職を希望する生徒の皆さんと
担当する先生方にエ-ルを送らせていただきたい。
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  日本キャリア教育学会ニューズレター 第91号(2017.8.9発行)

                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                     http://jssce.wdc-jp.com/
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■ 【開催報告】近畿研究地区部会 総会・研究会
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 2017年6月18日(日)14:30~17:30に近畿研究地区部会の総会・研究会
が関西大学第3学舎D401教室で開催されました。研究会は「キャリア、ジェ
ンダー、アイデンティティ」を全体テーマとして、研究報告とパネルディス
カッションから構成されるシンポジウムとして実施されました。
 研究会では家島明彦先生(大阪大学)より「企画趣旨」の説明があり、続
いて安達智子先生(大阪教育大学)より「ジェンダーとキャリア」と題する
研究報告がありました。
 前半の研究報告では、日本における性別職域分離の問題が取り上げられ、
職業選択において男性は伝統的に男性が多くを占める領域に、女性は女性が
多くを占める領域に集中し、異性が優位な領域を避ける傾向がみられるとい
う調査結果が報告されました。また、VPI職業興味検査のMF尺度を用いて職業
に対するステレオタイプと自己効力を測定した結果、大学生の男女ともに男
性職は男性的、女性職は女性的と認識しており同性のイメージをもつ職業に
対する自己効力の方が高くなるという傾向が示されました。さらに最近の大
学生は、いざ自分自身の将来となると、非常に伝統的なキャリアパターンに
収束していくという報告がなされ、性役割態度との関連についての議論が展
開されました。研究報告後には活発な質疑応答も行われました。
 後半のパネルディスカッションでは、ファシリテーターに安達智子先生
(大阪教育大学)、本庄麻美子先生(和歌山大学)、松下眞治先生(大阪市
立西高等学校)、コメンテーターに川崎友嗣先生(関西大学)、河崎智恵先
生(奈良教育大学)、コーディネーターに家島明彦先生(大阪大学)が登壇
されました。労働環境が変わっていく中でのキャリア教育の方向性、婚姻・
離婚・養子縁組又は離縁等の事由によって戸籍上の氏名に変更が生じた場合
の現場での対応、ジェンダーに関わる指導・相談事例、LGBTなど性的マイノ
リティの生徒・学生に対する現場での対応など、事例共有や解決策の提案な
どフロアを含めた活発な議論が交わされました。時間が限られており、それ
ぞれ十分論じるには至りませんでしたが、端緒を開くことができたと感じま
した。
                  (文責:流通科学大学 川合宏之)
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■ 【書評】
  『実践家のためのナラティブ/社会構成主義キャリア・カウンセリング
       ―クライエントとともに〈望ましい状況〉を構築する技法』
  (渡部昌平編著、高橋浩・廣川進・松本桂樹・大原良夫・新目真紀著
                          福村出版 2017)
                        弘前大学 松田侑子
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 「キャリア・カウンセリング」は、それと明示される状況でなくとも、個
人の生き方に触れるという点で、誰もが一度は経験するといえる。「自分の
後ろを振り返れば道ができている」という言葉が示すように、私たちは日々
を生きていく中でいつの間にか「物語」を紡いでいるのであり、それを日々
意識することはないかもしれない。ナラティブ/社会構成主義アプローチで
は、そういう個人の「物語」に光をあて、それを自分の固定した視点からだ
けではなく、より豊かな「物語」として捉えられるようになることを目指し
ている。
 キャリア・カウンセリングが行われる場面では、決して専門的な勉強や訓
練を受けてきた人ばかりが支援に当たっているわけではない。従って、援助
者としての熟達化をどのように図っていくのかは重要な課題であると思われ
る。本書の特徴は、こうした課題に二つの側面から向き合っている点にある
と感じた。一つ目は、キャリア・カウンセリングの初学者や、ナラティブ/
社会構成主義アプローチの初学者にも面接をリアルに思い描けるよう工夫さ
れている点にある。特に、関心を引くのは、著者の実践から得られた、生き
生きとした事例の提示やワークシートの紹介である。二つ目は、キャリア・
コンサルタントとしてすでに活躍している方々の語りを紐解きながら、ナラ
ティブ/社会構成主義アプローチとの出会いや、キャリア・コンサルタント
としての模索をありのままに示し、読者自らのキャリアを考えるきっかけを
提供している点である。
 本書を読了したときに、本書の副題が端的にここで伝えたいこと、扱いた
いことを表現していると感じた。そのための一つのツールが、ナラティブ/
社会構成主義アプローチということだろう。クライエントの足元を照らしな
がら、少しでも今よりよい状況を生み出すこと、それを積み重ねられるよう
援助すること。これこそが、クライエントがまた新しいストーリーを紡いで
いく強みにつながることを本書は終始強調しており、多様な生き方が在り得
る現代にこそ必要な視点であると改めて考えさせられた。
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■ 【コラム】就職活動というトランジション
                学習院大学人文科学研究科 小菅清香
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 某大学のキャンパスにて。青々と茂る若葉の下で、黒々としたスーツに身
を包み、スマートフォンに目を凝らす学生たちがいます。彼らは目下、就職
活動中なのです。
 6月1日、公的に選考活動が解禁されました。いよいよ就職活動も本番、
と言いたいところですが、リクルートキャリアの調査では5月1日時点での大
学生の就職内定率は35.1%。3人に1人はすでに内定を得ているとの結果です。
このような状況ですから、今から活動が本格化する学生の中には「乗り遅れ
た」と感じる方がいらっしゃるでしょうし、彼らを支援する方々の中にも
「動き出しが遅い」と評価される方が多いことでしょう。経団連の示す就職
活動スケジュールはほぼ毎年変更されますが、「一般的な就職活動のレール
にのらない(のれない)学生」問題は、例年の課題です。
 では、彼らはどう動けばよかったのでしょう。従来の研究が導く内定をと
るための秘訣は、荒っぽく言えば「早期から」「志望を明瞭にし」「積極的
に動く」ことです。日本では特に「新卒」「採用スケジュール」の時間的制
約が厳しく、ある時期に適切な活動をしないとその後の就職活動が不利にな
ります。そのため早くに志望を決定し、その志望にむけて活動を多くする、
すなわち就職活動経験を積むことが、成果達成に重要とされてきたのです。
ただ一方で、やみくもな活動は単なる失敗経験の蓄積ともなりえ、ドロップ
アウトにつながるとの知見もあります。
 巷に溢れる「就活マニュアル」や各大学での「就活ガイダンス」では「早
く」「多く」が推奨される傾向にあります。しかし実のところ、客観的なエ
ビデンスに欠けた意見も多いようです。「キャリア」を論ずる際には、「内
定」という一時点の成果を追い求めさせること自体が否定的に響くことがあ
ります。しかし、学生の一生を左右しかねない就職活動を、実証的な知見を
もって導こうとする姿勢が、今の我々には必要なのではないのでしょうか。
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  日本キャリア教育学会ニューズレター 第90号(2017.7.10発行)

                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                     http://jssce.wdc-jp.com/
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■ 【開催報告】
    (特集)アジア地区キャリア発達学会 (ARACD)第12回研究大会①
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 2017年5月17日と18日の両日、韓国ソウル市シェラトンソウル江南パレス
ホテルにて、アジア地区キャリア発達学会(Asian Regional Association for
 Career Development)国際大会が開催されました。延べ人数で200人ほどの
参加者があつまりました。開催国である韓国をはじめ、隣国である日本、
中国(香港)、インド、インドネシア、マレーシア、パキスタン、イラン、
シンガポール、台湾、アメリカ(特別顧問)からの参加者が集まり意義深い
交流を することができました。

 大会初日の午前中は、ARACD理事会および総会を開催し、今後のARACDの進
め方について活発な議論の場となりました。ARACDは、1967年に前身となる
Asian Regional Conference on Educational and Vocational Guidance
(ARAVEG)の実行委員会が東京において開催され、1970年に台湾で開催された
研究大会で国際組織として結成されました。その後、1997年に再び台湾で研
究大会が開催され、当時の理事会で現在の名称への変更が決議され今日に至
っています。発足の段階から数えると今年が50年目、ARACDとしては20年目
となります。

 理事会では、ARACDの果たす役割についていくつか提言がなされました。
特に、Career Developmentという欧米発祥の価値観・理論に依拠した研究お
よびそれに基づく実践が主流となりつつある現状において、アジア特有の問
題について取り上げ、アジアの価値観で捉えなおしていく必要があるという
力強い発言があり、多くの理事の賛同を得ました。具体的な例としては、キ
ャリア支援に関するアジア・スタンダードの基準を作成し、ARACD主催のワ
ークショップおよび研究大会などへの参加によって、クレデンシャルを与え、
ARACDとしてキャリア・カウンセラーおよびキャリア・コンサルタントの資格
を授与することが可能となるような組織に発展させるべきであるとの提案が
なされました。すぐに実現することが難しそうな内容ではありますが、アジ
アに目を向けた研究活動・実践活動のニーズが高まっていることが明らかと
なりました。

 以上、今回のソウル大会では、今後のARACDの活動に対する大きな期待と
それを実現するための課題について改めて認識を深め、アジアの若者の社会
的・職業的自立を支援し、平和を維持するために連携・協力を深めることで
一致することができました。今後は、加盟国で開催されるキャリア教育・キ
ャリア支援関連の研究会やワークショップなどの情報を随時共有しARACDの
HP上(www.aracd.asia)で公開することになっています。日本キャリア教育学
会会員の皆様におかれましては、是非ご高覧の上、積極的に参加していただ
きたいと思います。なお、次の研究大会は、2019年度にマレーシアプトラ大
学(University Putra Malaysia)の主催で開催されることが内定(現在、細
かな運営方法について検討中)しています。多くの皆様のご参加をお願いい
たします。

 (文責:ARACD事務局長・日本キャリア教育学会国際交流委員長 岡部敦)
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■ 【開催報告】
    (特集)アジア地区キャリア発達学会 (ARACD)第12回研究大会②
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 2017年5月に韓国ソウルで開催されたアジア地区キャリア発達学会
(Asian Regional Association for Career Development: ARACD)の国際大
会に参加してきました。本大会は韓国の青少年政策研究院(National Youth
 Policy Institute: NYPI)との共催であり、非常に立派で豪華な大会でし
た。私はARACDの会計担当として、また、本学会の国際交流委員会委員とし
て、大会前日から会場(ホテル)入りしており、準備の段階から見ていまし
たが、大会委員長の金先生やNYPIスタッフの方々のホスピタリティには感銘
を受けました。

 初日の午前には理事会および総会が開催され、各国の代表者がARACDの今後
の在り方について議論をしました。初日の午後には基調講演とカントリーレ
ポートがあり、10カ国以上の代表者から報告がありました。各国の状況を学
ぶことができ、大変勉強になりました。2日目の午前には個人研究発表と特
別ラウンドテーブルがあり、各国の研究者が各自の研究について発表しまし
た。私も口頭発表を行いましたが、異なる国や文化の視点から有益なコメン
トやアドバイスをいただくことができました。2日目の午後には韓国の学校
視察ツアーがあり、現場の先生から話を聞くことができました。

 今回得たものは多数ありますが、ここでは2つだけ紹介します。1つは
「契機」で、同じアジア地域でありながら文化や考え方が異なる諸外国の研
究者との交流を通して、自身の研究の価値や意義をグローバルな視点(特に
アジアの視点)から捉え直す良い機会を得ることができました。もう1つは
「動機」で、諸外国の研究者から「英語で書かれた論文はないのか」と抜刷
を求められたことなどを通して、自信にもなりましたし、将来的に自身の研
究を国際的に展開してみたいなという想いを強くしました。北米や欧州の国
際学会には過去に何度か参加したことがありますが、実はアジアは今回が初
めてでした。今後はもっとアジアの国際学会にも積極的に足を運んでみよう
と思います。
                    (文責:大阪大学 家島明彦)

※ARACD韓国大会フォトギャラリー
https://goo.gl/photos/DCoVv5ZmDZyaUdri9
学会員のみ閲覧可といたしますので、ファイル写真の二次利用やURLの転載は
ご遠慮ください。
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■ 【書評】
  『経験資本と学習――首都圏大学生949人の大規模調査結果』
  (岩崎久美子・下村英雄・柳澤文敬・伊藤素江・村田維沙・堀一輝著
                          明石書店 2016)

                        早稲田大学 三村隆男
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 2017年3月大田区より『大田区子どもの生活実態に関するアンケート調査
報告書』が示された、学校のおける貧国が取りざたされる中、同区が三つの
要素で生活困難層を特定したものである。その一つに「子どもとの経験や消
費行動、所有物に関する項目」があり、その中には、「海水浴に行く」「博
物館・科学館・美術館に行く」「キャンプやバーベキューに行く」などの項
目があった。

 書評にもかかわらず、大田区の調査報告書を最初に挙げた理由は、同書の
「経験資本の格差はそのままキャリア形成上の格差へとスライドする」
(224頁)や、さらに「学習経験がある種の抽象的な方略として整理されて、
現実の学力レベルと相関する。個々の経験が資本として蓄積されて、その後
の生活と関連する一つの実相を観察できる」(223頁)を支持する事例とし
たかったのである。
 同書は、前半の首都圏の大学生に対する大規模調査から人生における経験
がキャリア形成にどの様に関連づくかに触れ、キャリア研究における「経験
資本」という概念を示した。ここでの引用は、すべて著者のひとり下村英雄
氏執筆の終章からである。

 氏のさらなる主張「キャリア教育が、時に現実離れした夢や希望に駆り立
てるかのような口ぶりであるのは、どこかで若者や子どもの人生をリセット
するような視点を確保するためである。仮によそのような形で現実から離れ
るのでなければ、生まれてからこの方、好むと好まざるとにかかわらず蓄積
されてきてしまった経験資本の格差におしつぶされ、どこまでも苦渋を噛み
締めつつ生きなければならないであろう」(234頁)はキャリア教育実践が
抱える葛藤を見事に言い当てている。

 職場体験、就労体験をはじめとする学校におけるキャリア教育の取り組み
は学校が担うべき子どもたちの経験資本の平準化に大きく貢献するものであ
る。こうした体験活動について、従来の啓発的経験からさらに踏み込んで
「経験資本の格差」の視点からその意義を検討する時代が到来したと言える。
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■ 【コラム】酪農家民泊体験から捉える教育大生のキャリア意識の変容

                     北海道教育大学 半澤礼之
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 北海道教育大学は5つのキャンパス(札幌・函館・旭川・岩見沢・釧路)を
有しており、私は道東に位置する釧路のキャンパスに所属しています。本キ
ャンパスでは、第一次産業が盛んであるという道東の特性を生かし、体験を
通じた食育指導力の向上や地域とのつながりの重要性の理解を促すことを目
的として、地元の農協の青年部の方々の協力のもと、酪農家宅での宿泊作業
体験授業(民泊体験実習)を行っています。私は民泊体験実習に関わるよう
になって4年目(実習自体は5年目)になるのですが、この実習は受講生に
とって「将来学校教員になる自分」という彼らのキャリア意識を深める上で
重要な機会になっていると考えています。

 本実習は「宿泊体験」+「振り返りのための個人・グループワーク」の二
部構成になっており、私は主に後者に関わっています。ワークでは、先述し
た本実習の目的に沿う意見が学生から多く出されるのですが、もう一点重要
な意見のカテゴリとして、「将来教師になる自分を見つめなおす」というも
のがあげられます。ある地域に留まり、そこで何代にもわたって酪農を続け
ている方々とのやり取りは、地域間を移動し(本学の学生のほとんどは釧路
出身ではない)教師という職業を自ら選択した(と自分は考えている)彼ら
にとって、自身のこれまでやこれからを捉えなおす機会になっているようで
す。

 実際、実習前後に受講生に行った調査では、「見つめなおし」に関するデ
ータは十分ではないものの、この体験が彼らの大学生活での学び、そして自
らのキャリアに関わる将来展望に影響を与えている可能性があることが示唆
されました(半澤・宮前,2015)。

 ここまでの内容ですと、「大学生が企業にインターンシップに行って新し
い視点を得る」といった従来のキャリア教育と大きく違いがないように見え
ると思われます。私は今後、この活動を「地域と教育」というキーワードで
従来とは異なった視点から深めていきたいと考えています。

【引用文献】
半澤礼之・宮前耕史(2015).「酪農家民泊体験実習」プログラムを通じた
大学生の知識構造の変化と将来展望形成 日本教師教育学会第25回研究大会
発表要旨集,186-187.
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  日本キャリア教育学会ニューズレター 第89号(2017.6.13発行)

                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                 http://jssce.wdc-jp.com/
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■ 【開催報告】中部地区研究部会 第1回研究会
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 平成29年5月21日(日)13:00~16:00に一宮市市民活動支援センター
AB連結教室において中部地区研究部会第1回研究会が開催されました。
 研究会の講師は、石黒康夫氏(神奈川県逗子市教育委員会教育部長)、
演題は「 子どもの良さを伸ばす『認める指導』の組織的な推進 」でした。

 石黒康夫氏は昨年の演題「変化をおこす技法~ミルトン・エルクトン博士
に学ぶ~」を講演頂き、参加者の熱狂的な支援、共感共鳴があり、時間が足
りない状態で、次回も必ず講師に呼びますとの約束で修了した経由があり、
今回の講演に繋がりました。サブタイトルは「石黒康夫先生180分ノンス
トップセミナー」で熱い講演が展開されました。
 先生との出会いは、國分先生の日本スクールカウンセリング協議会の東京
セミナーの分科会に伊藤正秀氏と受講して、終了後二人で講師控え室に飛び
込み中部地区研究部会の講師をお願いして快諾頂いたこと始まりました。

 講演は「認める指導」とは、背景となる考え方は、メタ認知能力強化の
原理、嫌子より好子、グリーンゾーンという考え方、中学校で用いた実際の
例、指導の基準(考え方)1、大切にする 2、素直にふるまう 3、話し
合って解決する 4、時間を守る 5、自分をコントロールする等、永年の
教育現場、中学校校長先生でのスキル、ノウハウに満ちた講演で来年に繋が
る受講者の共鳴を誘いました。

 もっと時間が欲しいと皆さんが言われました。
 私は来年も呼びたいと考えます。

    (文責:日本キャリア教育学会 中部地区研究部会会長 長坂廣幸)
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■ 【書評】
   『学校にいくのは、なんのため?
             読み・書き・計算と学ぶ態度を身につけよう』
   『「仕事」と「職業」はどうちがうの?
             キャリア教育の現場をみてみよう』
   『どうして仕事をしなければならないの?
             アクティブ・ラーニングの実例から』
          (稲葉茂勝著, 長田徹監修 ミネルヴァ書房 2017)

                       愛知教育大学 京免徹雄
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 本三部作は、シリーズ「変わる!キャリア教育」として、現役の文部科学
省生徒指導調査官の監修のもと、刊行された。その最大の特色は、小・中学
生を対象にキャリア教育について解説した本だということに尽きる。写真や
図表が多く、文字にはすべてルビが振ってあり、さらに巻末に用語解説があ
るなど、大変に分かりやすい内容になっている。

 教員向けの実践集や指導書は既に多く刊行されているが、子ども向けにつ
いて評者は管見の限り知らない。しかし、新学習指導要領で主体的な学びが
強調される中にあって、児童・生徒自身が学校で行われているキャリア教育
という活動が何であるかを知り、その意義を理解することは決めて重要であ
ろう。以下、その概要を簡潔に紹介したい。

 第1巻では、学校の起源や学校の歴史、発展途上国を中心とする世界の教
育事情に触れながら、能力(読み・書き・そろばん)に加えて、主体的に学
習に取り組む態度を身に付けることの重要性が語られている。さらに、失業
後の就職にも触れ、そのために学校において将来を設計していなければなら
ないことも述べられている。最後に、全国キャリア教育研究会について紹介
されており、先生自身の学び続ける姿が提示されているのは、印象的である。

 第2巻では、仕事、家計、職業、会社、産業といった主に経済に関わるキ
ャリア教育の主要概念が解説されている。特に、仕事とは役割のことであり、
係活動など日常での役割が将来につがなっていることが、実感できるように
なっている。また最後には、「楽しいキャリア教育の授業レポート」として、
アグリスクール、企業体験、観光ガイド、子ども門前市など7つの実践事例
が紹介されている。

 第3巻では、大人が働く理由として、収入を得ること以外に「自己実現」
があること、また働く人の税金によって社会福祉などが成り立っていること
が説明されている。また、具体的なデータをもとに、卒業後の進路について
考えさせている。後半は、キャリア教育の授業レポートが3件紹介されてい
る他、先生がキャリア教育でどのような工夫をしているかが示されており、
子ども自身にキャリア教育を意識化させる内容になっている。

 以上のように、多くの示唆に富んだ本シリーズであるが、気になる点もあ
る。全体を通じて「勤労の義務」が強調された構成になっているが、第3巻
ではこれが「ニート」「パラサイトシングル」「非正規雇用労働者」とセッ
トで登場する。確かに子どもにとって関心をもちやすいテーマであるが、
「社会的・職業的自立」=「正社員を目指すこと」という誤解を招かないた
めにも、若干フォローが必要ではなかったか。また、若者を使い捨てにする
企業が問題視される現状を鑑みた場合、「勤労の義務」だけでなく、「働く
人の権利」にも触れてほしかったと個人的には思う。

 とはいえ、冒頭に述べた本三部作の価値はいささかも揺るぐものではなく、
キャリア教育を充分に認知してこなかった子どもや保護者に向けて、その全
体像を明らかにした貴重な書であることに変わりはない。学校や家庭におい
て、大人と子どもが本シリーズを手に取って、キャリアについて積極的に語
り合うことを期待したい。もちろん、キャリア教育の研究者・実践者にとっ
ても、「子どもにいかに伝えるか」を考えさせられる文献であり、一読をお
勧めしたい。
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■ 【コラム】LGBTとキャリア
                    日本福祉大学 矢崎 裕美子
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 2年生対象の「キャリアデザイン基礎」という授業で、学生に自分のライ
フラインを書く機会を設けた。ライフラインは生まれてから現在までの感情
の変化をグラフ化するものだが、過去、現在、未来の連続性を意識してもら
うために、10年後の未来までを描くようにした。私は提出されたライフライ
ン約100名分を見ながら、ふと手を止めた。ある女子学生の記述である。
「大学卒業後は、数年働いたら結婚し、出産…」と未来の感情軸はどんどん
上がっていく。卒業後の未来として描くものとしては大変一般的なものだ。
しかし、彼女は本当にそのような自分の未来を描いたのだろうか、と疑問に
思った。
 彼女は私のゼミ生でもあり,LGBT当事者であることは恐らく周囲にカミン
グアウトをしておらず、私自身彼女の言動から推測したのであった。ゼミの
最後のレポートは「自分のキャリアのあり方について、ゼミで学んだことを
踏まえて論じよ」というもの。彼女のレポートには以下のように書いてあっ
た。
 「キャリアデザインの授業でライフラインを書いた時に周りの皆が何歳で
結婚して、子どもを産んでと言っているなか、結婚なんてできるのかもわか
らなくて、子どもなんて絶対にできないのだと分かっていて、どうしても自
分の未来が想像できなくて困った。…最近は日本でもパートナーシップ条例
として認められているかのように思える同性婚。なぜ許可がいるのだろうか。
いろんな疑問や不満が限りなくある。その中で自分のキャリアを考えるとい
うことは、自分の真ん中の部分を知るということ、人と関わるうえで変化し
ていくということだと思う。」
 一人でつらさを抱えて、将来の見通しも持てないでいることに胸が締め付
けられたが、彼女が「人と関わるうえで変化していくこと」と自分を捉え、
「卒業後は、自分と同じようなLGBTの人たちを支援できる仕事をしたい」と
レポートを前向きに締めくくったところに希望が持てた。そしてそのレポー
トを何回か読んでいるうちに、彼女は周囲にカミングアウトができないので
はなく、しないのではないか。カミングアウトをしないこと自体が特別視さ
れるのでなく、この社会で自然に生きたいというメッセージなのではないか
と感じるようになった。
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  日本キャリア教育学会ニューズレター 第88号(2017.5.10発行)

                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                 http://jssce.wdc-jp.com/
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■ 【コラム】「研究する力」はウリになるか?
                       南山大学 浦上 昌則
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 「先生なら何をウリにしますか?」
 就活中の学生から、時々このような質問を受けます。大学に研究者として
籍を置く身ですので、「研究する力」としか答えようがありません(他に特
技もないし…)。とりあえず、研究に関してはプロでいられるよう努力して
います(そのつもりです)し、それがあるからこそ雇われていると思ってい
ます。
 「それってウレます…?」
 先のように答えると、大抵は怪訝な顔でこのように聞かれます。「買い手
次第じゃない」というのがいつもの答えですが…。
 でもこの話には続きがあって、正直なところは「研究する力」は売れると
信じています。課題を見つけ、適切な方法を用いてその現象のメカニズムを
解明し、そこから妥当な結論(対応策)を導く。これが研究する力の基本だ
と思っています。専門はどうであれ、これは研究する力に共通する要素でし
ょうし、便利なことに、多様な場面に応用できます。この力を求めない雇用
主がいるでしょうか?
 たとえば教師にとっても、研究する力は不可欠でしょう。授業や指導を改
善していくために、研究する力はどうしても必要です。これがなければ、
「例年通り」とか「マニュアル通り」の指導、カンに頼った指導しかできな
くなってしまいます。これでは教師としての成長は望めないでしょう。カウ
ンセラーや他の職業にしても同じだと思います。その職での成長は、そこで
の経験と研究する力によってうながされると思います。
 だから私は、どんなに怪訝な表情を向けられても、学生に「研究する力が
大事」と言い続けようと思っています。もっとも、それくらいしかできない
のですが…。

 さて、今回のこの原稿は、研究推進委員会が学会webでの掲載を企画して
いる、連載「研究をする」ともつながるものです。研究を行っていく上で役
立つ読み物を提供していきたいと考えています。5月下旬からスタートを予
定していますので,どうぞご覧ください。
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  日本キャリア教育学会ニューズレター 第87号(2017.4.10発行)

                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                 http://jssce.wdc-jp.com/
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■ 【開催報告】北海道・東北研究地区部会2016年度第2回研究会
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 平成29年3月18日(土)に弘前大学教育学部にて北海道・東北地区部会の
平成28年度第2回研究会・総会が行われた。
 研究会の講師は秋田県立大学・総合科学教育研究センターの渡部昌平氏で
ある。本ニューズレターの2月号にて、筆者が書評を執筆した「はじめての
ナラティブ/社会構成主義キャリア・カウンセリング」の著者でもある。今
回のテーマは「ナラティブ・アプローチを教育に生かす~相談から教育への
拡張」であった。
 当日は、小グループに分かれてワークショップ中心をまず行った。具体的
内容としては、どんな意見が出ても否定をしないという約束のもとでのブレ
ーンストーミングである。「煉瓦の目的外の使い方」といったテーマから徐
々に「夫婦間の問題」などの人間関係上の問題へと移っていった。主眼は
「解決志向」に置かれた。渡部氏は、問題を解決できないのは、しばしば思
考が悪い意味で習慣化しているからであると説く。今回のワークショップの
ねらいは、ほかの人は自分が思いも寄らなかった角度から問題にアプローチ
しようとすることを知ることで、そのような習慣化した思考から離れ、自分
の気づいていなかった資源に目を向けるという見方を体験的に学ぶというと
ころにあった。それは言い換えれば、「新たなナラティブ(道徳や倫理、あ
るいは将来像)を構築していく」という考えを学ぶということでもある。
 議論は書評において提起した「若者はナラティブの構築に必要な経験を欠
いているのではないか」にも及んだが、渡部氏の答えは「それで困ったこと
は一例のみ。後は漫画に対する関心からでも広げられる」という自信に満ち
たものであった。参加者の反応はかなり好評であり、参加者同士の踏み込ん
だ交流が行えたことも大きな収穫であった。

    (文責:キャリア教育学会北海道・東北地区部会代表 吉中 淳)
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■ 【コラム】キャリア教育と入学式

                      愛知教育大学 京免 徹雄
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 4月といえば桜、桜といえば入学式…を連想するのはきっと私だけではな
いですよね。会員の皆様の中には、ご家族やご友人(あるいはご自身)が、
この春から新たな学校に進学される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 入学式は卒業式と並んで、日本人にとって最もありふれた行事の1つです
が、海外ではこのようなセレモニーを行わない国も少なくありません。例え
ばフランスの学校では、入学初日に児童・生徒は直接教室に入り、クラスご
とのガイダンス後に授業がはじまります。一方で、日本では入学式はれっき
とした正規の教育活動であり、特別活動に含まれる「学校行事」、その中で
も「儀式的行事」に分類されます。釈迦に説法であることを重々承知しつつ、
平成20年版中学校学習指導要領によると、儀式的行事の内容は「学校生活に
有意義な変化や折り目をつけ、厳粛で清新な気分を味わい、新しい生活の展
開への動機付けとなるような活動」とされていいます。つまり入学式は、子
どもたちに自己のキャリアの節目を自覚させ、これから始まるキャリアステ
ージに希望や意欲をもって参画できるようにする「移行支援」の一環である
と考えることができるでしょう。
 特に近年では、小1プロブレム、中1ギャップ、高1クライシスなどが問
題となっており、学校制度や生活環境の変化に適応できず、不登校に陥って
しまう児童・生徒も少なくありません。この点でも、入学式は「学校で行わ
れる最初のキャリア教育」にならなければいけないと思います。もちろん入
学式は、行事の目標をきちんと設定し、1人1人が活躍できる役割をプロデ
ュースすることによって、新入生を迎え入れる側の在校生にとってもキャリ
ア教育になり得るでしょう。
 しかしながら、入学式を含めた儀式的行事について、キャリア教育の観点
からの分析はあまり進んでいないのではないでしょうか。例えば、学校行事
の残り4つ(文化的行事、健康安全・体育的行事、旅行・集団宿泊的行事、
勤労生産・奉仕的行事)の効果測定はそれなりに行われていますが、儀式的
行事に関しては少なくとも私はみたことがありません。前述のように、儀式
的行事は極めて日本に特徴的な取り組みであり、また教科外活動の中で最も
古い歴史をもった伝統的教育実践でもあります。今後、研究が進展し、児童
・生徒のキャリア形成に資する入学式の在り方について議論されることを願
ってやみません。
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  日本キャリア教育学会ニューズレター 第86号(2017.3.13発行)


                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                 http://jssce.wdc-jp.com/
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■ 書評
  「キーワードキャリア教育 生涯にわたる生き方教育の理解と実践」
     (小泉令三・古川雅文・西山久子編著 北大路書房,2016)

                       愛知教育大学 高綱睦美
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 キャリア教育の必要性が叫ばれるようになってからずいぶん経過し、教育
関係者のみならず,さまざまな立場の方が子どもたちのキャリア形成に関わ
るようになってきた。
  一方で「キャリア教育」という言葉は多くの方が耳にしているものの、そ
の取り組み方は多様で、何をキャリア教育の核にするのかということについ
ては実践者によって違いがあり、その多様さがキャリア教育に対する捉えに
くさの一因となっている。

 新学習指導要領をはじめ教育が大きく動き出そうとしている今、改めてキ
ャリア教育が何を目指しているのか、そして何を核にして取り組むことが重
要であるのか理解しておくことは、これからの社会を生き抜く子どもたちを
支援する上で重要であろう。しかしそうした中、キャリア教育をメインテー
マとしつつ、網羅的に取り扱っているテキストはまだそれほど多くない。

 その点、本書は、キャリア教育の位置づけや理論から諸外国における取組
みまで幅広く扱うと共に、学校段階のみならず生涯にわたるキャリア教育に
ついても取り上げており、キャリア形成に携わる者にとって知っておくべき
知識について、キーワードを挙げながら簡潔に記述すると共に、実践のヒン
トを示してくれている。
 さらに、各章末に記されているColumnでは市民性教育や学習意欲とキャリ
ア教育の関わり、保護者の役割や時間的展望との関わりなど、キャリア教育
を進めていく際に気になるテーマを深く考えていくきっかけを与えてくれる。

 教育現場はますます忙しさを増していく中、本書を読み込みすべてを理解
した上で実践に移すことは難しいかもしれないが、関係する章を手掛かりに、
理論と実践を行き来しながらそれぞれの実態に合わせて試行錯誤を重ねてい
くことがこれからのキャリア教育には必要であり、本書はそのよりどころと
して有効な一冊となると考えている。
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  日本キャリア教育学会ニューズレター 第85号(2017.2.13発行)

                    発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                  http://jssce.wdc-jp.com/
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■ ARACDとは~日本キャリア教育学会とのかかわり~
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ARACDは、1970年にアジア地区での教育と職業のガイダンスに携わる者たち
の学会として、the Asian Regional Association for Vocational and 
Educational Guidance(ARAVEG)第1回研究大会を台湾で開催した。その後、
1997年にthe Asian Regional Association for Career Development(ARACD)
と名称変更を行った。ARACDは、キャリア発達や人材開発を促進する教育、
ビジネス、政府などにおける個人や組織間の情報や経験を支援し交換し合う
人々の共通理解や連携を強化し、アジア全体の繁栄と福祉と平和に寄与する
ことを目的としている。

第2回以降の研究大会開催国は以下である。(  )内は開催年である。
日本(1974)、フィリピン(1997)、マレーシア(1980)、インドネシア
(1983)、インドネシア(1992)、日本(1994)、台湾(1997)、シンガ
ポール(2001)、インドネシア(2013)、日本(2015)、韓国(2017)。
発足してから47年を経過したが、ようやくここ3回の開催が定期的に行われ
ている。開催国における政治や経済の不安、自然災害などに見舞われなが
らも、ARACDは、究極であるアジアの繁栄と平和を目指して活動を続けて
きた。

わが国の日本進路指導協会や日本キャリア教育学会(前日本進路指導学会、
元日本職業指導学会)がながらくその運営を支えてきた。発足のきっかけ
となった1967年のARAVEG 集会や発足を決定づけた1969年の運営委員会の
双方が東京で開催されたことからもその深いかかわりが半世紀に及んでい
ることがわかる。

現在の役員は以下である。会長はARACD研究大会の前回開催国、副会長は、
前々回の開催国及び次回開催国から出すことになっている。

◆会 長:三村隆男(日本)
◆副会長:H. Sutijono, Drs., M. M.(インドネシア)
     Kim, Hyuncheol(韓国)
◆事務局長:岡部敦(日本)
◆理 事:Mantak Yuen(香港)、Raza Abbas(パキスタン)、
     Hsiu-Lan Shelley Tien(台湾)、Salim Atay(トルコ)、
     Saeid Safaei Movahhed、Maryam Behnoodi(イラン)、
     Steven Krauss(マレーシア)、
     TAN Soo Yin, Ph. D.(シンガポール)、
     藤田晃之(日本)、川崎友嗣(日本)
◆事務局:京免徹雄(日本)、家島明彦(日本)
◆顧 問:Darryl Takizo Yagi(米国)、
     Lui Hah Wah Elena(シンガポール)、
     Mohamad Surya(インドネシア)、
     萩原信一(日本)、下村英雄(日本)

       (文責:日本キャリア教育学会会長、ARACD会長 三村隆男)
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■ 書評:『はじめてのナラティブ/社会構成主義キャリア・
      カウンセリング-未来志向の新しいカウンセリング論』
     (渡部昌平著、川島書店)
                         弘前大学 吉中淳
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 キャリア・カウンセリングにおいて「未来」というテーマは厄介である。
キャリア教育は基本的に未来の準備をさせる活動である。ところが、カウン
セリングで著名なロジャースは、「今、ここが大事」と未来のことに言及す
るのを避けているかのようである。
 また、因果関係の解明こそが使命と考える研究者たちは、「未来はある意
味で確定しており、後は要因を特定するのみ」といった「決定論」を暗黙の
うちに前提としているともいえる。研究者が研究についてそう考えるのは自
由だが、一般の人々が自らの人生について、そのような決定論的見解をもち、
しかも、その内容がネガティブであったら、その人生は息苦しいというほか
ない。
 本書の「ナラティブ/社会構成主義」というのはこの難題に対する一つの
回答といえる。未来は客観的に決まっているのではなく、本人の気づきやナ
ラティブによって構築されるものであると。それはある意味で、近代科学に
対する挑戦にも見える。
 本書は、「はじめての」とあるように、優しい語り口で、概念図をふんだ
んに利用しながら社会構成主義によるキャリアカウンセリングをわかりやす
く説明している。本書を片手に取り組めば、筆者のような実践の素人でも、
ともかく一通りのことはできそうという見通しを与えてくれる。
 とはいえ、気になったこともある。本書でいう「解決」とは結局、クライ
エントの納得なのか。だとしたら、クライエントが一定の理性的で妥当な判
断ができるということが前提とされよう。最近の若者は「男はお笑い・女は
ファッション」が関心事であるとのことだが、ナラティブの構築に必要な経
験を欠いていることも多いのではないか。実際、本書の事例は、この技法の
土俵に乗せるまでの著者の苦労の記録にもみえる。本書の技法の前提を満た
すための高校までのキャリア教育という課題も浮き彫りになったように感じ
た。
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