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ニューズレター 第98号(2018.3.12発行)

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 日本キャリア教育学会ニューズレター 第98号(2018.3.12発行)

                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                     http://jssce.wdc-jp.com/
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■ 【開催報告】日本キャリア教育学会関東研究地区部会第3回研修会
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日本キャリア教育学会第3回関東地区部会研修会
「社会と学校をつなぐこれからのキャリア教育」
     2018年1月20日早稲田大学早稲田キャンパス16号館106教室)報告

 社会に開かれた教育課程を実施する方法として、キャリア教育による社会
と学校との接続の実現があるのではないか。学校教育に変化する社会の動き
を取り込み、世の中と結びついた授業を実施することが求められるなか、こ
の問いを取り上げた。
 ここでは社会に開かれた教育課程を実現するために「学校から社会へのキ
ャリア教育」、「社会から学校へのキャリア教育」、「社会と学校を繋ぐキ
ャリア教育」の3つの立場で社会と学校をつなぐこれからのキャリア教育を
考えるシンポジウムの企画であった。
 はじめに、第1部の基調講演として、これからのキャリア教育-社会に開
かれた教育課程が期待すること-について、藤田晃之様(筑波大学)にご講演
いただいた。第2部の講演には、「学校から社会へのキャリア教育」を
清水隆彦様(荒川区立第三中学校)に中学校の全教育活動で進めるキャリア教
育推進の実態とその課題-学校から社会へつなぐキャリア教育-、「社会か
ら学校へのキャリア教育」を福田里香様(パナソニック株式会社)に生きる力
の育成に向けて企業の持てる力を発揮する-パナソニックが取り組む教育支
援活動-、「学校と社会をつなぐキャリア教育」を若江眞紀様(株式会社キャ
リア・リンク)に企業の教育支援の在り方についてご講演いただいた。第3
部では来場者を交えワークショップを行った。第4部ではパネリストによる
総括を行った。
 学校と社会をつなぐこれからのキャリア教育の実現には、藤田晃之様は子
どもの変容をどう捉えるか、清水隆彦様は到達点に至る過程の工夫をどう考
えていくか、福田里香様は時代の潮流に合わせた教育の展開にどう取り組む
か、若江眞紀様は教育CSRから戦略的CSV(Creating Shared Value)への移行
が新たな価値を創出する能動的で先進的な関わりへと転換していく必要があ
ると述べられた。
 学校と社会をつなぐキャリア教育を行うには、よりよい社会とは何かを共
通理解した上で学校と社会及び両者つなぐ組織が目標に向かって動き出すこ
とが必要不可欠であることを強く感じさせるシンポジウムであった。

            (文責 早稲田大学大学院教職研究科 折霜文男)
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■ 【書評】『学校と企業と地域をつなぐ新時代のキャリア教育』
       (長田徹・清川卓二・翁長有希著 東京書籍 2017)
           学校法人自由学園男子部(中等科・高等科)教諭
                            高野慎太郎
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 キャリア教育実践における重要局面の一つに「就労支援」がある。職業と
個人とのマッチングを企図する営みであるが、その過程・帰結ともに、いわ
ゆる「労働市場」の影響を受けざるを得ない。とりわけ過疎化が進行する地
方においては、「職業(選択の余地)のある場所」を求めては「上京やむな
し」とされ、「いずれ帰らざる上京者」が量産されるに到る。
 彼の地における「キャリア教育」の成否は、個人の実存レベルの話であれ
ばそれでいて幸せな帰結ではあるが、しかし、キャリア教育に前提を供給す
るものとしての「(地域)社会」の減衰を招いたと考えれば、不幸と考えざ
るを得ない。斯様な労働市場への過剰適応(&帰結としての地域社会の崩壊)
に対する「キャリア教育」による処方箋として、本書を読んだ。
 本書は、現役の文部科学省生徒指導調査官、中小企業経営者、地域連携教
育推進NPO代表の三者により執筆され、「学校」「企業」「地域」をつなぐ
「新時代のキャリア教育」のあり方を提示する。全三章の構成は以下である。
 Ⅰ 新たな学習指導要領におけるキャリア教育
 Ⅱ 企業にとってのキャリア教育
 Ⅲ 地域におけるキャリア教育
 第Ⅰ章では新たな学習指導要領とキャリア教育の関係といった理論的側面
への概説に加え、キャリア・ノート、教科学習とキャリア教育の関連付けに
よる授業改善、職場体験などに関する実践事例が豊富に紹介される。
 第Ⅱ章では、新卒者の県外流出が続く福井県において、メッキ会社と商工
会議所が取り組むキャリア教育の詳細が記される。キャリア教育を「社会投
資活動」(75頁)と捉えたそれらの取り組みは、「このままでは、日本の中
小企業は弱くなる」(66頁)との厳しい現実認識から出たもので、外郭の広
い実践となっている。授業を受けた生徒と講師への追跡調査の結果が追加資
料として付され、活動の現在・過去・未来を見渡せる点も大いに参考になる。
 第Ⅲ章では、沖縄県の実践が詳述される。本章に紹介される沖縄県伊平屋
村は、過疎化の進む地域であるが、島総出でキャリア教育に取り組み、
「『仕事がないから帰れない』のではなく、『将来の仕事をつくりに島に帰
る』」(95頁)という新卒者の生き方のサイクルを回そうとしている。「地
域の未来を『キャリア教育』に託す、可能性と責任」(101頁)との言葉に
は、抜き差しならぬ真実味がある。実践が成功に導かれた要因には、著者で
あるキャリア教育コーディネーターの活躍が大きく、本章にその奥義を読む
ことができる。
 上述のように、本書のキャリア教育は「企業」活動を含む「地域」を「学
校」によって再生するという趣向を呈する。かかる実践者の動機や振る舞い
自体が、生き方に関わる教育としての「価値観」を内包している。労働市場
への過剰適応が空ける社会の穴を、生き方に関わる教育としてのキャリア教
育が埋め合わせる可能性を見て取ることができるのである。
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■ 【コラム】資格取得とキャリア教育
                    東京医科大学医学部 菰田孝行
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 学校に勤務されている先生方におかれましては、まもなくキャンパスに新
入生があふれ、活気あふれる季節になるかと存じます。しかしながら、本原
稿の執筆時は2月下旬であり、特に医療系の資格取得を目指す大学や専門学
校では、国家試験が終了し、発表を待つ微妙な時期となっているのではない
でしょうか。
 筆者の勤務校は、医学部医学科と医学部看護学科を有する単科大学であり、
課程修了時には医師と看護師の国家試験を修了生全員が受験し、進学を除く
合格者全員が医師もしくは看護師として就職するので、民間企業等への就職
者がいない、いわゆる出口としては特殊な状況にある大学であるといえます。
 本原稿執筆時には2018年2月試験の合格発表がまだのため、2017年の試験
結果を記述すれば、本学の医師国家試験の合格率は95.1%、同様に看護師国
家試験の合格率は100%であり、医師の全国平均91.8%、看護師の全国平均
94.3%をいずれも上回り、学生の努力の成果といえるでしょう。
 しかしながら、この陰で教員や学校自体が並々ならぬ努力をしている現状
は、あまり表に出てきません。図書館は24時間オープンで学生の学習環境に
配慮されており、教員は通常講義とは別に試験対策の補講を担当し、模擬試
験の成績下位者には個人面談をして学習方法を直接指導し、さらに医学部で
は試験直前に合宿を実施して底上げを図っています。
 学生は、入学時に職業とそれに伴って取得しなければならない資格の選択
を済ませており、希望の職業に就くためには資格取得が必須であり、資格試
験対策がキャリア教育の一環とし機能している現状があります。特に医療系
の資格は、その資格を取得しないとその職に就くことができないものが多く
あります。自分のキャリアのスタートラインにつけるように支援するのもキ
ャリア教育だなと、勤務校に赴任して気づかされました。
 そして、資格取得に限らず、就職や進路の選択において、キャンパスにあ
ふれる新入生が笑顔で卒業できるように支援することも、キャリア教育の目
的に含まれ、教職員の役割でもあると改めて感じています。
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